ラファエロ@国立西洋美術館

ラファエロは、ダヴィンチ、ミケランジェロと並んでルネッサンスを代表する芸術家の一人である。しかし、他の二名と比べると、どうにも地味な印象が付きまとう。その理由はいくつか考えられるが、日本で鑑賞する機会が少ないというのがあるのではないだろうか。

今回23点が来日し、本格的な形で個人展が開催されるというのは、ラファエロの作品に親しむ良い機会だ。イタリアやフランスに頻繁に行くことがないのであればなおさらのこと。

日曜日の午後の国立西洋美術館は、そんなラファエロの作品に触れようとする人で一杯だった。中でも、キービジュアルになっている「大公の聖母」の前は大勢の人が足を止めていた。神々しいまでの肌の質感が、どのようなタッチからもたらされるのかを見極めるように。あるいは、後年、何者かの手によって黒く塗りつぶされた背景の下に、オリジナルの痕跡が浮かび上がらないかと探るように。

今回の一連のラファエロの作品を見て感じるのは、その均整である。突出したところや、派手なところがない。完璧なまでに整えられたバランスは、ある種の品の良さを醸し出している。入口をはいってすぐのところに掛かっている「自画像」もそうだ。整った

佇まいは、時を超えて「永遠の静寂」を思わせるに至っている。

「大公の聖母」以外に印象に残った作品は、「聖ゲオルギウスと竜」。後年イギリスで「ラファエロ前派」の創設者の一人であるバーン=ジョーンズによって繰り返されたモチーフである。他には、ダイナミックな「エゼキエルの幻視」も天から神が現れる様子を描いており、忘れがたい印象を残す。

ラファエロ本人の作品のほか、弟子達の手による作品や、後年コピーされた作品も展示されていて、中でもフェデリコ・ズッカリによる「牢獄から解放される聖ペテロ」は、天使(女性に見える)の神秘的なまでの美しさが魅力的で、ラファエロ前派好きにはたまらないテイスト。これはラファエロのオリジナルがあるのならぜひ見てみたいと思わせる作品。

全体を通じて、決定的な傑作というものはないかもしれない(それがまたラファエロの地味な印象につながっているのかもしれない)が、凝縮感のある展示であり、いかにもラファエロらしい品の良さも感じさせる。

グッズも通常の図録に加えて、小形の図録を出していたり、ロディとのコラボ企画があったり、充実していたように思う。手元に置いておきたいポストカードを選んだら5枚になってしまった。いつもは2枚を目安にしているのだが、カードの品揃えとクオリティが良かった。値段も100円と良心的。

ここまで充実したラファエロ展は、今度いつ見ることができるか分からない。大型連休の混み合う前に行って正解だったと思う。


公式サイト:ラファエロ | 国立西洋美術館 | 2013年3月2日(土)〜6月2日(日)