ミュシャ展@森アーツセンターギャラリー

ミュシャを前回東京で見たのは、昨年4月の三菱一号館美術館の『KATAGAMI Style』の中でだった。それが今回は個人展、しかも合計240点という充実ぶり。これを見ない手はないということで、早速、初日に行ってきた。

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(PHOTO:シャープ、CAMERA:OLYMPUS XZ-1)

公式サイト:ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展

構成は以下の通り。

第1章 チェコ人ミュシャ
第2章 サラ・ベルナールとの出会い
第3章 ミュシャ様式とアール・ヌーボー
第4章 美の探求
第5章 パリ万博と世紀末
第6章 ミュシャの祈り

主催が「これまでの展覧会とは一線を画し、ミュシャの芸術家としての功績を通じて、作品のみならず、作家のコンセプトや芸術理念、さらには思想を考察する」と大見得を切るだけあって、ミュシャのイメージと強く結びつくカラーリトグラフだけでなく、彼のルーツであるスラヴ民族の歴史を描いた晩年の大作までフォローしてあり、人となりや価値観が分かる展覧会になっていた。

そうは言っても、やはり今回の展示の中心となるのは、カラーリトグラフ。美術館に足を運ぶ人の多くもそれが目当てだろうと思われる。特に、女優サラ・ベルナールをモデルとした作品群は、どれも個性的な世界観を持っている。彼女との出会いが彼の才能を開花させたことは間違いない。思想よりもデザインが優先されているように見受けるものの、作品の中心に女神が鎮座在していて、圧倒的な存在感。

個人的に一番惹かれたのは、5章に展示されている「四つの星」。1902年の作品。ミュシャの装飾性はしっかりとあるが、他の明るい作品群とは異なり、ダークで神秘主義的な雰囲気を醸し出す。「宵の明星」「暁の明星」「月」「北極星」の4つの作品から構成されていて、どれも暗がりの中から仄かに光が差している。中でも「月」の持つ蠱惑な空気に引き寄せられた。

晩年はプラハ市に寄贈した「スラヴ叙事詩」の制作に注力したという。商業デザインでの名声だけではなく、普遍的な歴史の分野で芸術家として貢献したかった彼の思いは理解できる。

…という重厚な作品で締めくくられた後、出口の外はギフトショップ。そこはもうリトグラフやポストカードなどのミュシャグッズの宝庫。2次元萌えの人にはたまらない世界が繰り広げられている。もし時間を遡れたら晩年のミュシャに「心配いりません。あなたの描いた商業ポスターは時代を越えて愛されます」と伝えたいくらい。

ということで、自分でもポスターとポストカードをそれぞれ二組ずつ買ってきた。ミュシャの作品はペアで飾るに限る。ここのギフトショップからは東京タワーが見えた。

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(PHOTO:シャープ、CAMERA:OLYMPUS XZ-1)