前半は、宗谷名人対桐山五段。二人の勝負自体が「高み」にいる同士のみが辿り着ける場所であって、もう美しいとしかいいようがない。『エヴァQ』では少年達はピアノの連弾で心を通わせ合ったが、ここでは将棋を差し合うことで同じ世界を共有している。勝負あってからの展開も見所。
そして、後半は柳原棋匠対島田八段。飄々とした印象しかない柳原棋匠だが、背負っているものの大きさや、勝利への執念の凄まじさなどが描かれる。ベテランというか、老人の域に達している二人だけに、「美しい」とは言えないかもしれない。だが、棋士が棋士らしく年を重ね、人間が人間らしく生き長らえるということは、決して美しいだけではないということなんだろう。そう思わされる。
男臭い将棋の世界が展開する中で、あかりさんのお料理教室(?)が、一服の清涼剤としてかえって存在感を増している。だがそれがいい。
ちなみに、書店で購入したときに、羽海野チカイラスト×いろんな作家の言葉入りの栞がもらえるということで、選べるのかなと思いきや、レジのお姉さんは何もいわずに「あかりさんの入浴×有川浩」のものを付けてくれた。いや、まあ、文句はないけど、そんな顔をしてたのだろうか。
- 作者: 羽海野チカ
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2012/12/14
- メディア: コミック
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