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日本よ、これが投資銀行だ・・・??

映画『アベンジャーズ』のコピー「日本よ、これが映画だ」は酷い。「アメリカの上から目線が鼻につく」という批判もあるが、こんな文章を考えつくのはアメリカ人ではなく、日本の訳知り顔の「業界通」だろう。嫌な気分になる目線だ。

同じように訳知り顔の「業界通」による嫌な目線の記事が、今日の日経新聞に載っている。

投資銀、進まぬ外資参入 12年上期の国内大手シェア65%に

企業の増資引き受けといった投資銀行業務で国内金融機関のシェアが高まっている。2012年上期(1〜6月)は国内の銀行・証券大手5社が日本市場の約3分の2を握り、世界の主要市場の中で現地金融機関のシェアが最も高かった。日本では外資の参入はなかなか進まず、逆に日本事業を縮小する動きも出ている。
日本市場がアジアの金融センターとして生き残るには、外資の力を生かして市場を活性化する取り組みも必要になりそうだ。
日経新聞・2012年8月13日)

外資の参入はなかなか進まず、逆に日本事業を縮小する動きも出ている」というくだりからは、この記事の書き手のため息が聞こえてくるようだ。だが、外資の参入がなかなか進まないことに何か問題があるのか。いや、そもそも外資の参入は進むべきものなのか。

外資に日本事業を縮小する動きが出ているとすれば、その理由の最大のものは「市場の成長率の低さ」にほかならない。日経はこの点について深い考察をせず「外資の参入が進まなくては、日本ではこのビジネスは育たない」と決めつけている。「日本よ、これが投資銀行だ」とでも言いたげだ。

でも、本当か。外資では、思いつくままに挙げる限り、シティグループの法令違反、リーマンの経営破綻、最近の英銀のLIBOR不正等のさまざまな問題が起きている。にもかかわらず、外資投資銀行がどんどん参入すれば、それだけ日本市場が魅力的になるというのか。本気でそう考えているとしたらおしまいだ。あるいはある種の教条なのかもしれない。

この日経の教条のポジションは「TPP推進」のとき同じだ。ある意味で一貫している。「日本よ、これが経済だ」と。経済紙として主張をするのは自由であるが、ロジックが破綻しているものを記事にされるのはどうにも頂けない。少なくとも、読者の立場からはそのような教条は不要だ。経済新聞は宗教団体の新聞ではないのだ。インターネットの発達によって情報自体の入手のコストが低くなっている中、ロジックがない教条にお金を払う価値を感じない。

記事は最後にこう結んでいる。

日本市場がアジアの金融センターとして生き残るには、外資の力を生かして市場を活性化する取り組みも必要になりそうだ。

アジアの金融センターのライバルである香港、シンガポールと比べた場合、確かに外資は入りにくいだろう。それは、英語人材の少なさであったり、ロジックの乏しさであったりするのだろうが、「経済専門紙」を自任する日経がこのような独りよがりな主張をすること自体に、日本のロジックの弱さが現れているように思われる。

こうしたマスコミの体たらくから想像するに、そのうち「日本よ、これが新聞だ」というコピーを引っ下げてどこかの外資系新聞が進出することもあるだろう。そのときにも、日経は「日本のマスコミ市場の活性化に繋がる」といって歓迎するのだろうか。