完璧な最終回―『坂道のアポロン』

終わった。
ためにためたブレイクで、来るぞ来るぞと思っているところに、どっかーん!
たとえ「ベタ」だと言われても、これぞカタルシス。
たとえ「陳腐」だと言われても、これぞいい最終回。
感動した。

『坂道のアポロン』の原作コミックは3月に完結したばかり。甘く、酸っぱく、ときに苦い。そんな青春時代の繊細な人間模様を丁寧に描いた作品。その原作のストーリーを完全に取り込みながら、コミックでは表現できない「音楽」を高いクオリティで導入し、新たな魅力を見せてくれた。最終回が完璧というだけではなく、全体を通じて傑作になったと思う。ノイタミナの歴代作品の中でも屈指の良作品ではないか(ちなみに、自分にとってのノイタミナ最高傑作は『放浪息子』、NOISEなら『青い花』)。

コミック9巻かけて展開される「青春群像劇」をアニメ1クールでも十分に描ききり、さらに感動を与えられるということを、アニメ版『坂道のアポロン』は示してくれた。オリジナルエピソードを入れたり、ディテールに必要以上にこだわってしまうとこうはいかない。これは渡辺信一郎監督の手腕だろう。

渡辺信一郎は、このクールで『LUPIN the Third -峰不二子という女-』の音楽プロデューサーも務めていた。まさに時代の人になった、といえるだろう。