バーン=ジョーンズ展―装飾と象徴@三菱一号館美術館

アーサー王がアヴァロンで永遠の眠りにつく傍らで、ランスロットが夢を見ている―

『Fate』の話ではなく、バーン=ジョーンズ展のことだ。

公式サイト:バーン=ジョーンズ展 -装飾と象徴- Edward Burne-Jones | 2012年6月23日(土)~8月19日(日)| 三菱一号館美術館(東京・丸の内)

25年ぶりの日本でのバーン=ジョーンズ展。前回は「後期ラファエル前派」とセットだったが、単独の展示は今回の三菱一号館美術館が本邦初。

「ペルセウス」「聖ゲオルギウス」などの神話の世界を主題にしていながらも、バーン=ジョーンズの作品は、幻想的というよりも現実との連繋を感じさせる。特に印象に残る作品は、「ピグマリオン」と「いばら姫」と「運命の車輪」あたり。個人的には連作の「ピグマリオン」に最も惹きつけられた。4点から成る連作だが、モデルに対する画家の気持ちが伝わってくるところがあり、なんとも切なくなる。

想像力は空を翔けたとしても、筆を持つ画家の体はしっかりと地に足がついていて、この人が根本的に常識人であったことを思わせる。出口の直前に掲げられている「風刺的自画像」を見れば、バーン=ジョーンズがいかに自身を客観視していたかがわかるというものだ。この「自分で自分を笑える」ユーモアは、なんともイギリスらしい。

バーン=ジョーンズのファンなら館内の解説はどれも読み応えがあり、図録もこの機会に手に入れるべきアイテム。わが国のバーン=ジョーンズ研究の第一人者である河村錠一郎の解説も25年前に続いて堪能することができる。三菱一号館美術館の加藤明子学芸員の渾身の一撃。愛がなければこうはいかない。