「ルドンとその周辺−夢見る世紀末展」@三菱一号館美術館

去年の京都旅行の際に「えき」KYOTOで開催していた「ルドンとその周辺−夢見る世紀末展」の巡回展が東京に来たので、三菱一号館美術館に鑑賞に行った。

公式サイト:ルドンとその周辺―夢見る世紀末|三菱一号館美術館 グラン・ブーケ収蔵記念

本来はルドンと言えば眼球。「こじらせ系」の画家のはずだ。事実、去年の京都の展示のときには、以下のように解説されていた。

外界の記録を旨とし、あくまで物事をありのままに描くことに重きがおかれていた「自然主義」全盛の時代に、あえてそれに逆行するような夢や幻想などの世界に踏み込んだルドン

それが、三菱一号館美術館に来ると、なぜか「グラン・ブーケ(大きな花束)」になってしまう。同美術館がこのタイミングで作品を購入したという事情もあるのだろうけど、ルドンの位置付けを正しく説明しているようには思われなかった。まあ、場所柄の客層を考慮したコンサバティブな広告にした方が効果が高いと踏んだのだろう。そして、ほとんどが岐阜県美術館のコレクションという中で自らの所蔵のものを前面に出したいという事情もあろう。

個人的には「その周辺」として位置付けられた象徴主義の画家の作品の方に興味津々。ギュスタヴ・モロー『聖セバスティアヌスと天使』は、パリのギュスタヴ・モロー美術館で見た数々の作品に比べると相当小さいサイズだが、コレクション向けと聞いて納得。あとは、ムンク『マドンナ』なんかもこの作家らしく幻想的な中に奇怪なテイストがあり、強く印象に残った。

象徴主義の絵に興味があれば、たとえルドンに関心がなくとも、パステル画の花束に関心がなくとも、見に行く価値のある展示。今回の岐阜県立美術館によるルドンの巡回展もこれで終了らしいので、貴重な機会だと思う。