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もはやクラシックの領域―『オペラ座の怪人』25周年記念公演 in ロンドン

演劇 映画

2011年10月1日・2日、ロンドン・ロイヤルアルバートホール。その日、その場所にいられた人は幸福である。『オペラ座の怪人』25周年記念公演という歴史的イベントの証人になったのだから。

だが、その日、その場所にいられなかった人にも、幸福のおすそわけがある。この舞台は欧米1000箇所以上の会場に同時中継された。同時中継されなかった日本のファンにも機会がある。それが映画館での上映だ。というわけで、六本木ヒルズに行ってきた。

公式サイト:オペラ座の怪人 25周年記念公演inロンドン 私的レビュー

作品自体は歴史的評価にも耐え得るという意味で、もはやクラシック。今回のキャスティングも文句なし。オペラ座の怪人:Ramin Karimloo、クリスティーヌ・ダーエ:Sierra Boggess、ラウル・シャニュイ子爵:Hadley Fraserというキャスティング。これはもう演技・歌・ルックスいずれも素晴らしいの一言。3人のハーモニーの相性も良い。これはこれで、映画版とは異なる、舞台をほぼ忠実に再現した映像作品として「決定版」になるのではないだろうか。

特にデジタル映像の威力は凄まじく、Sierra Boggessの迫真の演技で、頬を涙が伝うところもしっかりと見えた。これは劇場のS席でもここまでは見えないだろうという情報量。音響面でも、オーケストラの音源と役者の台詞・歌がしっかりと分離してクリアな音を聞かせてくれる。後半では自分自身が劇場にいるかのような錯覚を覚える瞬間が何度かあった。それくらいの素晴らしい臨場感だった。ただし、映画館のスピーカーは中域がちょっと弱かった気もするが。

そして、カーテンコールで大いなるサプライズがあった。アンドリュー・ロイド=ウェバー本人の登場に続き、サラ・ブライトマンを始め、歴代のキャストが顔を揃えるという豪華なラインナップ。そして、ファントムの持ち歌を歴代のファントムが順番に歌い継いでいくという。イギリス人の男性の場合、年取れば取るだけ魅力的になるのはなぜだろう。アメリカの男性がいつまでも若作りをしてキツくなっていくのは対照的だ、などと思いながら聴いていた。

いずれにしても、歴史的瞬間に立ち会えるということを思えば、映画館に足を運ぶ価値は大いにある。いくらかの時間的・空間的なズレはあるが。2011年にこの作品を観る、という点では誤差の範囲だろう。問題は劇場が少ないということだ。現在東京での上映は、六本木ヒルズと品川プリンスの2館のみなので、いまならどちらかに行くしかない。BD/DVDは既にイギリスでは発売されており、いずれは日本でも字幕付きが発売になると思われる(字幕なしでよければ、いまでもAmazon.co.ukでオーダー可能)。それでも、自宅でBD/DVDを鑑賞するときにネックとなる「臨場感」と「迫力を味わうために、わざわざ映画館に足を運ぶ価値はあると思う。

最後にこれから行く人がいれば一つアドバイス。上映は3時間を越える長丁場で、終盤のカーテンコールにお楽しみがあるので、途中でトイレに行くのがお勧め。タイミングは舞台の一幕が終わったところ。ここでディスク交換のためと思われる映像・音声の中断が入る。ここがチャンス。周囲に迷惑がかかるが、これ以外のタイミングではもっと迷惑だろう。できれば、映画館でもここで「10分休憩」なんかにすればいいのにと思うのだが。