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ファントムが帰ってきた―劇団四季『オペラ座の怪人』

劇団四季の上演する『オペラ座の怪人』が4年半振りに東京に戻ってきた。ということで、汐留の電通四季劇場「海」に急遽足を運ぶ。予約が出遅れたので良席は確保できず。A席の最後列。ブロードウェイのクラシックなマジェスティック劇場と、モダンそのものの「海」では雰囲気がまるで違うので、あえて両者の比較はしない。

それでも、いまや四季では貴重になった「生オケ」のおかげで、十分な臨場感が味わえる。また『オペラ座の怪人』といえばシャンデリアというくらい重要なアイテムであるシャンデリアも、現代的な設計の「海劇場」に合わせて巧妙に設置されていた。

今回のキャスティングは、以下の通り。

オペラ座の怪人:高井治
クリスティーヌ・ダーエ:高木美果
ラウル・シャニュイ子爵:中井智彦
カルロッタ・ジュディチェルリ:河村彩
メグ・ジリー:松田未莉亜
マダム・ジリー:横山幸江
ムッシュー・アンドレ:増田守人
ムッシュー・フィルマン:平良交一
ウバルド・ピアンジ:半場俊一郎

ファントム役の高井治は、去年の金曜ロードショー吹き替えと同じ。現在の看板と言えるかもしれない。低音部ではやや荒々しくしゃくるのに、高音部では探るように繊細になるところが官能的。彼の美声を聴いているだけで、幻想的で完美な世界に誘われそうだ。

クリスティーヌ役の高木美果は、高音部がよく伸びる歌い手。ただ、初々しさはあまりなく、また色気もそれほどない。どちらかというと、安定志向のキャスティングと言えるのではないだろうか。個人的には、表現力豊かで包容力のある演技に好感を持っている苫田亜沙子のクリスティーヌを観てみたい。

ラウル役の中井智彦は、誠実で紳士的なこのキャラクターにふさわしい雰囲気を醸し出していた。やや押し出しが弱い印象があるが、一点の曇りもない歌声が、終盤におけるファントムとクリスティーヌとの三重唱を印象深いものにしていた。

総じて、アンドリュー・ロイド=ウェバーの手による華麗なスコアを、ファントムやクリスティーヌが歌い上げるのが聴きどころ。もちろんビジュアル面でも豪華絢爛な舞台装置や衣装や照明など見どころ満載ではあるが、「ファントムの切ない歌にうっとり」という声フェチ的に楽しむのが最も正しい鑑賞法なのではないかと実感した次第。個人的には、この点で何度もリピートしたくなるほどの常習性までは感じなかった。個人的な四季のベスト演目は『ウィキッド』のまま。

ということで、せっかく「海」に来てくれたのだが、次に足を運ぶ機会があるとすれば、苫田亜沙子が出演するときを狙って行くくらいかもしれない。