「2」としてはよい出来ー『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』

ヒット映画の続編は難しい。形を変えて同じことをやってるだけでは柳の下の二匹目のドジョウを捕られない。一方で大胆な路線変更をすれば拒絶反応になることもある。だが、この『ハムナプトラ2』は、巧妙にマーケティングをしてコンセプトを補強し、それが成功した2だと言える。以下ネタバレ。

まず前作の主人公とヒロインが前作の冒険を経て結ばれている。普通は二人が結ばれたらそこで物語はおしまいなのだが、なんとそして子供まで設けている。そしてその一人息子が物語の鍵を握る重要人物となっている。

これってあり?

これってあり! というのも、『ハムナプトラ』はマニア向けの映画ではなく、あくまで家族で見に行ける娯楽映画なのだ。男の子と一緒に親が行くことも少なからずあるだろう。この点で、主人公とヒロインが結婚して息子と一緒に冒険をするというのは、この作品のメインの観客層ときっと鏡写しだ。「家族でハムナプトラ」。ベタベタなくらいのマーケティングだが、これが成功している。

そして、前作で倒したはずの宿敵が復活する。今度は前回復活できなかった恋人の復活ももくろんで。

これってあり?

もちろんあり! 単に宿敵が復活するだけではない。彼をも脅かすさらに強大な別の敵が現れ、主人公達と三つどもえの戦いを繰り広げる。「主人公対敵」という対立構図だと、最終的に主人公が勝つことが見えてしまうのでスリルも半減することが多いが、三つどもえとすることで、「相手側が手を組んでしまうのではないか」「いや相手側がつぶしあうのではないか」「ラスボスはどっちだ」みたいな感じで先の展開が読みにくくなるというメリットがある。この作品の場合、そこも成功しているように見える。

また、前作でおなじみのキャラクターが期待通りの役回りを演じているのも、観る側に安心感を与え、満足感を高めている。それはヒロインの兄のとぼけた憎めなさであったり、エジプトの現地のリーダーの頼もしさであったり。観客というのはこの手のマンネリ、お約束が実は大好きなのだ。

こういうキャラクターが、カーチェイスを繰り広げたり、飛行機で前人未踏の地に分け入ったり、隠された遺跡でミイラと戦ったりする。これで面白くないわけがない。インディジョーンズの文法に従っている部分もあるが、後のハリーポッターシリーズに与えた影響もありそうだ。

インディといえば、ポスト・インディジョーンズ的な娯楽アドベンチャー・シリーズのライバル『パイレーツ・オブ・カリビアン』の2が、ストーリーとして完結せず、上映時間も長くなったのに対して、『ハムナプトラ』の2の方は潔い。きちんと完結した形にしているし、上映時間も1時間台に納めている。これはもっと評価されていいポイントだ。世の中の娯楽大作は、どこもかしこもCGバリバリの刺激の強い映像に、重低音ドーンの5.1Chサウンドで演出されているので、意外に鑑賞していて疲れるのだから。最近はこれに3Dまで加わるのだからその疲労は決して軽視できない。

しかし『ハムナプトラ2』を観終わっても、疲れは残らない。モヤモヤも残らない。いまの世の中の出来事を見つめなおしたりとか、人間関係について改めて考えたりというようなこともない。特に誰かに感想を伝えようとか、おすすめしようというような強い気持ちもわき起こらない。肩のこらない作品だ。これでいいのかというくらいに、実に何も残らない。すっきりと。

娯楽映画として「すっきり」というのは、作品の善し悪しを図る指標になると思う。マーケティング的なバランスの良さゆえに、フリーク的な人気が高まるような要素もない。だが、それがいいということなんだろう。興行収入としてはディズニーブランドの『パイレーツ・オブ・カリビアン』には及ばないものの、歴代100位に入る程度には健闘している。僕みたいに「BOXが安いから買ってみたけど、何となく見そびれている」というような人がいれば、よい娯楽になるとお薦めしたいところだ。