『パイレーツ・オブ・カリビアン』3部作からのキーラ・ナイトレイ祭り、というわけではないけれども、彼女が主演の『プライドと偏見』を観た。
18世紀イギリスの保守的な価値観の中で交錯する男女の想いを描いた作品。典型的なイギリス文学だが、決して古臭くはなく、現代のキャスティングと演出のおかげもあって、新しい息吹を吹き込まれている。
キャスティングでは、主演のキーラが、持ち味の「強さ」を見せている。当時のイギリスに併せてやや慎ましやかになってはいるが、隠しようのない輝きを放っている。また、相手方となるダーシー役のマシュー・マクファディンが抜群の存在感。あのアラン・リックマンにも通じる控えめで内省的な演技。あまりに雰囲気が似ているので調べたら、彼と同じく、王立演劇学校からロイヤル・シェークスピア・カンパニーへ進んだと。なるほど。ハリー・ポッターが次に映像化される機会があれば、マシューがスネイプ先生だ。
えっと、『プライドと偏見』の話でしたね。
結論から言えば、きわめて上質な映画。何度でも観たくなる。イングランドの田園風景、仕立てのよい衣装、人間味あふれる家族関係、ピアノをメインにしたシンプルな音楽。すべてが美しい。特に、ラストシーン近くの朝焼けの逆光のカットの神々しさ。これは観ないと分からないが、パッケージ写真でもその雰囲気の一端は味わることができる。
しっかりとした信念をもちながらも、それゆえに反発しあってしまう二人が、さまざまな事件を通じて互いを認めていくというのは、『眺めのいい部屋』にも通じるものがある。
また、結婚や恋愛における「身分格差」が大きなテーマになっているという点では、『ジェーン・エア』や『日の名残り』を想わせる。BGMは『ピアノレッスン』風だ。イギリス文学やイギリス映画好きにはたまらない。
エンディングも英国的で、100%を描き切っていない。イギリス人と同じく「奥ゆかしさ」を愛する日本人ならこれで十分だろう。これが物足りないという人向けには、ベタベタなアメリカ版エンディングも「特典映像」として収録されている。
いまをときめくキャリー・マリガンがやや垢抜けない感じで登場しているのも一興。
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