『コズミックフロント』は素晴らしい

TVがつまらなくなった。TVなんて見ない。そんな声をよく聞く。で、よくよく聞くと、見ているのは民放のバラエティであったり、ニュースもどきの情報番組であったり、マンガをドラマ化したものであったり。

当たり前だ。そんなものが面白いはずがない。見る価値もない。面白いものを見るには、それなりの対価が必要だ。映画館に行ったり、BD/DVDを買ったりというのも選択肢だが、その他には、NHKの受信料を払うというのも一法だろう。

しかし、大河ドラマも朝ドラものど自慢も高校野球も見ないという人はいるだろう。僕もそうだ。この場合、受信料の元がとれるかどうかは微妙かもしれない。だが、そんな僕にも、久しぶりにこれはという面白い番組と出会うことができた。BSプレミアムで放送している『コズミックフロント』だ。夏休みということもあり、全12編を一挙放送していたのを教わった。これを録りためて見ている。ヤバイ。宇宙ヤバイ。改めて、その宇宙のヤバさを教えてくれる凄い番組だ。こんなにきちんと取材できて、こんなに立派な番組に仕立てられるのは、BBCかNHKくらいだろう。

公式サイト:コズミック フロント | NHK宇宙チャンネル

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テーマは、自分が子供の頃に関心があったものとほとんど変わっていない。だが、この数十年の宇宙研究におけるコンピュータの活躍には目を見張るものがある。それは、デジカメを使った大量の撮影であったり、大規模なシミュレーションであったり、仮説をビジュアル化するときのCGであったり。研究とは別の番組制作という観点でも、CGの活用とデジタルサウンドのBGMは、宇宙空間にいるような臨場感を盛り上げる。

受信料の対価として、見たくもない広告を見せられたりとか、ギャラの安い芸人集団の面白くもないトークを聞かされたりとか、視聴率を高くするための不自然な構成にいらいらさせられたりとか、そんなこととは無縁だ。こういう知的好奇心を刺激するような番組であれば、その恩恵はとても大きい。

宇宙に関する興味深いテーマについて、専門家がわかりやすく説明してくれるのに耳を傾け、現在分かっている最前線まで段階を追って到達する。それが『コズミックフロント』という番組の魅力だ。登場する専門家はみな名だたる大学や研究機関の人ばかりだが、例外なく平易な言葉で本質を突いた説明をしてくれる。僕が聞きたいのはこういう言葉だ。薄っぺらな解説や、笑いを取るボケなんていらない。真理というのは、ごくごくシンプルで、それでいて、人の胸を突くものであろうから。