『まどマギ』考察序論―ゲーム的リアリズムの観点から(2)

前回(『まどマギ』考察序論―ゲーム的リアリズムの観点から(1) - Sharpのアンシャープ日記)より続く。

「ループもの」と一口に言ってもいろいろある、ということで各作品のループの構造を比較しよう。以下ネタバレ注意。

魔法少女まどか☆マギカ

ひぐらしのなく頃に

  • 物語の主人公は誰か…(表面)前原圭一、(真)古手梨花
  • ループさせているのは誰か…古手梨花、羽入(?)
  • ループの原因は何か…昭和58年6月に古手梨花が殺害されること
  • ループに気付いているのは誰か…古手梨花、羽入
  • ループ脱出の条件は何か…主要人物が協力して鷹野三四の野望を打ち砕き古手梨花が殺害されないこと

仮面ライダー龍騎

  • 物語の主人公は誰か…(表面)城戸真司、(真)秋山蓮
  • ループさせているのは誰か…神崎士郎
  • ループの原因は何か…「ライダーシステム」により与えられた命の寿命が尽き、神崎優衣が死ぬこと
  • ループに気付いているのは誰か…神崎士郎、(後に)神崎優衣
  • ループ脱出の条件は何か…神崎優衣が城戸真司の影響を受け「ライダーシステム」による戦いをやめることを願うこと

涼宮ハルヒの憂鬱エンドレスエイト

  • 物語の主人公は誰か…キョン
  • ループさせているのは誰か…涼宮ハルヒ
  • ループの原因は何か…涼宮ハルヒが夏休みの最終日に「何かをやりのこした」と思って満足しないこと
  • ループに気付いているのは誰か…長門有希、(後に)キョン
  • ループ脱出の条件は何か…みんなで夏休みの宿題をやり終える

(『消失』については上手く比較ができそうもないため、やはり対象から外す)

この中では『ひぐらし』と『ハルヒ』が、ループを重ねることによって主要人物が数少ない最適解を認識し、それを目指して行動してその結果ループを脱出するという点で共通している。

それに対して、『まどマギ』は、むしろ『龍騎』に近い。つまり、最適解を探索することループから脱出するのではなく、ループするシステムの根源を無効化することによって、ループ自体を不可能にするというわけだ。

『ひぐらし』『ハルヒ』とは違って、この方法には代償が必要となる。つまり、全員が同じ世界には戻れない。『龍騎』の場合には神崎兄妹の消滅が代償であり、その他の主要人物も記憶を失い、ライダーになることもなかった。別の平和な世界を平凡に生きるのだ。そして、『まどマギ』の場合にはまどかの消滅(むしろ「神になること」か)が代償だ。まどかのいない世界では、ほむらだけがまどかの記憶を持っている。そして、魔法少女として戦っている(だが、魔女化することはない模様)。

ほむらはまどかを守ろうとして何度も世界をループさせた。だが、何度ループを繰り換えそうとも、ループから抜けることはできなかった。

このループを無効にしたのはまどかだ。彼女はずっと「大切な人を守りたい」と願っていた。最終的にこれを魔法少女になるという方法ではなく、神になるという方法で叶えることになった。自身が神となることで、彼女の理想の世界を実現したのだ。

(続く。次回 id:SHARP:20110608)