金は人を幸せにするか―『ウォール・ストリート』

金がめぐる、金がめぐる
俺達があぶれている間も奴らは楽しみ
金がめぐる、金がめぐる
神よ見捨てたもうな、などとほざきながら
(『マネー・ゴー・ラウンド』ザ・スタイル・カウンシル

金は人を幸せにするか、不幸にするか―

マネーゲームの帝王であるゴードン・ゲッコーは、前作のエンディングで刑務所に放り込まれた。インサイダー情報による不正取引で莫大な収益を上げた末路だった。金を追求するという目的が悪かったのか、それとも方法を間違えただけなのか。

あれから23年。オリバー・ストーン監督は続編を世に問うた。ゲッコー(マイケル・ダグラス)は刑期を終えたものの往年のエネルギーはなく、若い世代のジェイコブ・ムーア(シャイア・ラブーフ)がウォールストリートで活躍している。そして、ゲッコーの娘ウィニー(キャリー・マリガン)は父親に愛想をつかし、ムーアと交際しながらもマネーゲームとは別の価値観の世界で生きている。そんな彼ら3人をもマネーの流れは飲み込んで、新しいドラマが生まれていく…

なぜリーマンショック後のアメリカでオリバー・ストーンはこの作品を撮ったのか。バブル親父マイケル・ダグラスと草食系男子シャイア・ラブーフの世代交代を描きたかったのか。『インディ・ジョーンズ4』ではあるまいし、そんな単純なことではない。父と娘の和解? それもまた違うだろう。ではなぜ。

資本主義は終わらない。ただ好況と不況の波を繰り返して続くだけ。時に大恐慌を起こしながら。そこでマネーを増やすゲームに明け暮れていては、人は幸せになれない。では、幸せになるためには…マネーから身を置いて信念を貫くこうとするウィニーがその答を示している。それこそ、オリバー・ストーンが、リーマン後のアメリカに問いたかったものではないか。まあ、確かにそういう価値観もあり、と思わせるものだ。

キャスティングは絶妙。特にマイケル・ダグラスの存在感は今回も抜群。前回よりも相当枯れているはずなのに、後半のギラつきっぷりは只者ではない。シャイア・ラブーフの爽やかさは、前作のチャーリー・シーンと比べて21世紀の若者らしくてよい(といいつつ、本作でチャーリー・シーンの「友情出演」の場面では感激してしまった)。そして、キャリー・マリガンは、男臭いこの作品に花を添える。知的で、かつ強い女性像を体現していて、これもこれで21世紀のヒロインと呼ぶに相応しい。

ということで昨日の『わたしを離さないで』に続いて、プチ・キャリー・マリガン祭になってきた。。。