村上春樹が『1Q84』の第3部を執筆中

6月13日付エントリー「この世界は200Qなのか〜『1Q84』」(id:SHARP:20090613)で「この作品には間違いなく続編が用意されていると思われる」と書いたが、その予想が現実のものとなった。
当時の評論では「book2で十分に完結している」とか「バッハの平均律クラヴィーアの形式に準拠しているので様式美から追加はありえない」という意見も少なからずあった。だが、これまでの春樹の創作活動を振り返ると、『ねじまき鳥クロニクル<第三部>』や『ダンス・ダンス・ダンス』などが書かれてることから、『1Q84』においても続編を書かずにはいられないことは十分に予想できたはず。

早ければ来年夏にも"book3"が出ることになるだろう。そこでは、青豆と天吾が現実ではないどこか(二つの月のある1Q84年か)で出会い、リトル・ピープルに対して何らかの形で決着を付けるのだろう。そして、神秘的な少女のふかえりも生き様において重大な転換点を見せるかもしれない。今から楽しみだ。

村上春樹氏:「1Q84」を語る 単独インタビュー(1) 「来夏めどに第3部」

 5月に出した長編小説『1Q84』(第1、2部、新潮社・各1890円)が大きな話題となっている作家、村上春樹さんがこのほど、毎日新聞のインタビューに応じた。1980年代の日本を舞台に「個人とシステムの対立」を描いた重層的な物語だが、村上さんはさらに第3部を執筆中であることを初めて明らかにした。新作に込めた思いを聞いた。

■最初は『1985』

 −−『1Q84』は現在、2巻とも18刷を重ね、「BOOK1」が123万部、「BOOK2」が100万部と、ミリオンセラーを記録。複数の研究本が出版されるなど、驚異的な反響を巻き起こした。

 「僕の固定読者は、長編で約15万〜20万人いると自分では考えています。それくらいだと、自分の発信したものがそれなりに受け止められているという手応えがある。50万、100万となっちゃうと、どんな人が読んで、どんな感想を持っているかはなかなか見えないですよね」

 −−ジョージ・オーウェル『1984年』(49年)に由来する謎めいたタイトルも魅力的だが、これには秘話がある。

 「最初は『1985』にするつもりでした。でも、執筆中に、オーウェル作品を映画化したマイケル・ラドフォード監督と話していて、英作家アンソニー・バージェスが『1985』という作品を書いていたのに気がついた。いろいろ考えた末に『1Q84』に変えて書き上げたあと、インターネットで調べたら、浅田彰さんがやはり同じ題で音楽カセット付きの本を出されていると分かりました。もうゲラ校正を進めている段階だったので、浅田さんにお知らせしました。という紆余曲折があるんです」

 −−刊行から3カ月余り。この間、なされた批評について聞くと……。

 「全く読んでいません。いつも読まないんだけど、特に今、『BOOK3』を書いているから。まっさらな状態で執筆に集中したいから。1、2を書き上げた時はこれで完全に終わりと思っていたんです。バッハの『平均律クラヴィーア曲集』をフォーマットにしたのは、もともと2巻で完結と考え、そうしたわけです。でもしばらくして、やっぱり3を書いてみたいという気持ちになってきた。これから物事はどのように進んでいくのだろうと。時期的にはなるべく早く、来年初夏を目安に出すことを考えています」
書評 - 毎日jp(毎日新聞)