この世界は200Qなのか〜『1Q84』

村上春樹の最新作『1Q84』の「Book1」「Book2」を読み終えてもう2週間。発売日の前日からフライングで読み始めたのだが、既に合計100万部を越えたということで、そろそろネタバレの感想を記しても許されよう。

といいつつ、いまだにこの作品のことを詳細に論じる気にはなれない。最大の理由は、この作品には間違いなく続編が用意されていると思われることだ。現在のように物語が閉じていない状況では、何を語っても中途半端になってしまう気がする。でも、とりあえず。

この作品は「1984年」から始まるのだが、主要な登場人物はふとした契機から、よく似ているが全く別の世界−「1Q84年」に入り込んでしまう。あちらの世界では、空に月が二つ輝いているのだ。そして、その他にも何かがこちらの世界と違っている。どこかがおかしい。

だが、それならこちらの世界はおかしくないと言えるのだろうか。いや、そんなことはない。この世界だって、「ありえない」ようなこと、「あってはならない」ようなことが次々に起きているではないか。

いつからこうなったのか。何がきっかけでこうなったのか。考えれば思い当たることがなくはない。あれが分岐点だったと。だが、これだけは明らかだ。僕たちはもうその分岐点に戻ることはできない。なぜなら、僕たちは空間の中を逆方向に戻ることはできても、時間の中を逆方向に戻ることはできないからだ。あのときと「同じ場所」に行っても、そこは完全には「同じ場所」ではない。

僕がいま存在するこの世界は「2009」なのか、それとも「200Q」なのか。それを僕らは識別できるのだろうか。ここで、僕は不安になって夜空を仰ぎ見る。大丈夫、月は一つしかない。だが、それは果たしてこの世界が「200Q」でないことの証明になるのだろうか。いや、そんなに簡単ではないだろう。

もしかしたら『1Q84』の世界を覗き見たことで、僕は自分の「200Q」の扉を開けてしまったのかもしれない。

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 1


1Q84 BOOK 2

1Q84 BOOK 2