新生・あおぞらの統合

新生銀行あおぞら銀行も単独での生き残りが困難なことが明らかであり、目下の金融危機で何らかの対応は欠かせない状況だ。記事にあるような「来年夏メド」なんて悠長なタイムスパンではなく、ビジネス環境によっては来年3月末が一つの山場になると思う。

しかし、相変わらず日経の記事は嘘ばかりだ。「ともに企業金融を柱とする旧長期信用銀行同士の統合という強み」って一体何だ。詳しく説明して欲しい。金融自由化で旧長期信用銀行のビジネスモデルが成立しなくなったから、興銀が消え、長銀と日債銀が国有化されたのではなかったか。日経は、一体、平成の金融史をどう整理しているのだ。

次に「総資産が18兆円を超え、…国内6位の大手行が誕生する」って、護送船団の規制金利下ではあるまいし、資産規模で実力を図る発想はもういい加減にやめるべき。記事にあるような「競争力の強化」というのは、人間にたとえて言えば、筋肉質かどうかが問題なのであって、体重の多寡は無関係だろう。

まあ、百歩譲って「規模の経済」によってもある種の競争力を発揮することがあり得るとしよう。それにしても「メガバンク」の時代に18兆円というのはいかにも中途半端。トップの三菱UFJは192兆円、追従するみずほ、三井住友でさえ、それぞれ154兆円、111兆円である。はっきりとヒトケタ違う。つまり、たかだか18兆円では規模の争いの土俵にさえ上がれない。

本件は、本質的に顧客基盤の乏しい金融機関同士の統合であり、統合効果として何を狙うのかも不明確。勘繰ると、再国有化に際して「再編支援のための公的資金投入」という体裁のいいストーリーを作ろうとしているだけではなか。1997〜1999年のような金融不安を再燃させたくない当局も、このストーリーに加担している。これはある種の情報操作だ。政府が情報操作をするのは、仕方ないとあきらめるのもありだが、マスコミが政府と一緒に情報操作をするのは、報道機関として自殺行為だ。

いずれにしても「焦点」とされる株主の米系ファンドにとっても、遠からず経営破綻か国有化かという苦渋の選択を迫られることになろう。記事にあるような「意向」なんて贅沢なことは言っている場合ではない。

新生・あおぞら銀が統合交渉 来年夏メド、総資産国内6位

新生銀行あおぞら銀行が2010年夏の経営統合を目指して、調整に入ったことが24日、明らかになった。ともに企業金融を柱とする旧長期信用銀行同士の統合という強みを生かし、競争力の強化を目指す。実現すれば総資産が18兆円を超え、中央三井トラスト・ホールディングスを抜く国内6位の大手行が誕生する。それぞれの筆頭株主である米ファンドの意向が統合実現の焦点になる。

経営統合はまず、2010年夏にも共同持ち株会社を設立し、両行が持ち株会社の傘下に入る方式が有力。その後に両行が合併し、本格的な統合効果を模索する。相互の資産査定を終えており、統合会社への出資比率やトップ人事など計画の骨子作りを進めている。

日本経済新聞