馬鹿にしてる?〜『キサラギ』

いまさらながら『キサラギ』(公式サイト:)を観た。

キサラギ スタンダード・エディション [DVD]

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(以下あらゆるネタバレを含む)

これはがっかり。サスペンスも意外性もコメディも中途半端。「密室劇」と謳っているが、映画的に魅せる場面が皆無。ヒッチコックの『ロープ』や『十二人の怒れる男』には途中で観る者を驚かせる瞬間があるが、それが全くない。軽くて薄い。これを映画でやる必要なし。小劇場の芝居でやるべき。もしかしたらラジオドラマやCDで十分なレベル。その意味では、脚本の古沢良太の仕事は決して悪くないのだろう。おそらく監督の佐藤祐市の力量の問題。この軽さはTV向けの人なんだろうが、映画を馬鹿にしてる?

そもそもキャスティングが良くない。小栗旬、ユースケ・サンタマリア小出恵介、塚地武雄、香川照之の5人がネットで知り合ったアイドルファンとして集まるのだが、誰一人としてオタクに見えない。かろうじて香川照之がコミュニケーション不全っぽい演技をしているのだが、他の役者とかみ合わないまま最後まで消化不良。もったいない。爽やかな小栗旬は好感度こそ高いが、この映画ではそういう演技は求められていないことに気付くべきだ。ユースケ・サンタマリアは、他の作品やバラエティにでているときと変わらない。まるでキムタク。小出恵介も能天気を演じているのか、本当にKYな能天気なのか分からない。実はストーカーだったというオチに無理があり過ぎる。塚地はこのキャスト中で唯一オタクっぽい外見をしているのに、残念ながらコントそのままの押し付けがましい態度と芝居がかった口調で、取るべきポジションを取ることができなかった。こうした全ても結局は監督の問題に帰するだろう。

終盤、如月ミキの死の原因がなんとなく分かったところで(これもいまだに腑に落ちないけど)、プラネタリウムを見ながら各自が彼女に思いを馳せるあたり、実に気持ち悪い。何かの安っぽい新興宗教かと思った。ネタなのか真面目なのか分からない。ラスト、彼女のDVDを鑑賞して、みんなでヲタ芸をかますところも何だかなあという感じ。小栗旬の一生懸命な演技が空回りしているよ。これで一般人から笑いを取ろうとしているのなら、実にお寒いセンス。もしかして、オタクを馬鹿にしてる?

電車男』のヒット以来おたくを取り上げることが流行ったが、これはどうにも上っ面を滑っている。「密室劇」という点でも全く意義が分からない。今回は時間の無駄だと思ったが、映画館に足を運んでいたら「お金と時間の無駄だった」と怒るレベル。