坂本龍一『音楽は自由にする』

このタイトルは「都市の空気は自由にする」からだろうか。

坂本龍一の自伝『音楽は自由にする』を読んだ。ここでの坂本はセルフイメージを作ることなく、飾らない言葉でストレートに自分の生い立ち、音楽との出会い、YMOブーム等を振り返っている。もちろんここで語られないことはあるだろう。たとえば、結婚生活や、女性遍歴等。だが、そんな芸能ゴシップネタなどはどうでもいい。彼がいかに音楽を自己と重ね合わせ、そうして「映画」の世界に足を踏み入れ、9.11にどのような衝撃を受け、アイスランドで何を考えたか―それを知ることができるだけでも、この本には一読の価値があると思う。

もともとは雑誌『ENGINE』での長期連載だったもの。HASYMOの活動や、『out of noise』のリリース、日本でのツアー活動始動なども同時に進んでいる時期での本書のリリースは絶妙としかいいようがない。充実した内容といい、タイムリーさといい、『NAVI』の編集長時代から感じていたが、やはり鈴木正文という編集者は只者ではない。


音楽は自由にする

音楽は自由にする