『柴田元幸 ハイブ・リット』(6)

これが最後に収録されている作品。

読み進むにつれて「どうもどこかで読んだことのある話だが、何かのパロディだろうか」と不思議な既読感に襲われた。よくよく調べてみると『翻訳夜話』で柴田元幸村上春樹が競うように翻訳していた作品の一つだった。なるほどね。

ストーリー自体は、語り手であるポール(!)の友人のオーギー・レンが、クリスマスに関するお話ということで、落し物の財布、盲目の老女、クリスマス・ディナー、カメラと写真等にまつわる話をするというもの。オースターの他の作品と同様、現実と虚構の境界が分からなくなる不思議な味わいを持った作品。

オースターの肉声は、かすかにしゃがれた渋い感じで、知的でかつセクシー。

柴田元幸ハイブ・リット

柴田元幸ハイブ・リット