今日のハヤカワ文庫さん(13作品目)

早川書房の「SF&ファンタジイ・フェア」(関連:2008-06-23 - coco's bloblog - Horror & SF)シリーズの3巡目のラスト。5人娘推薦の25冊のうちこれで半分以上読んだことになる。

今回は早川さんおすすめのブライアン W.オールディス『地球の長い午後』。1962年に刊行され、ヒューゴー賞の短編賞部門受賞作品。

地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)

地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)

あらすじはこんな感じ。

はるか未来、寿命が尽きかけ膨張した太陽のもと、地球の自転は停止し地上には永遠の昼と夜が現れた。熱帯と化した昼の世界では、巨大に進化した樹木が大陸を覆い尽くし、活動する食肉植物が絶滅した動物にかわって地上を跋扈していた。そんななか、文明を失った人類は弱肉強食の世界で細々と生きていた。仲間を追われた少年グレンの旅の行方は……。

人類の文明が滅び、植物や昆虫が生存競争の勝者となっているという世界は、『風の谷のナウシカ』に大きな影響を与えたに違いない。また、椎名誠もこの作品へのオマージュとして『アド・バード』(アド・バード (集英社文庫))を書いているし、『水域』(水域 (講談社文庫))も同様。もしかしたら、田中ロミオの『人類は衰退しました』(人類は衰退しました (ガガガ文庫))も、こうした世界観の変奏曲の一つとして数えられるかもしれない。

タイムトラベル、地球外生命体、惑星間移動、高度な科学技術のようなSFの定番ともいえる設定は一切使われていないが、これはまぎれもなく「センス・オブ・ワンダー」に満ちたSFの傑作。オールディスはそういう定番を使わないという縛りを自らに課して、この作品を生み出したのではないかとさえ思われる。

SF者だけではなく、すべてのサブカル者必読の書だと思われる。今頃読んで遅いというツッコミはあると思うが、でも読んでよかったということで★★★★★。

3巡目はこれで終わり。早川さんと国生さんが11点で同点首位。続いて岩波さんが9点で3位。ということで、次の4巡目からは「女3人の争い」。さて。

  • 早川さん(平均点=3.7)

★★★★★地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)(レビュー=id:SHARP:20080808)
★★★★☆決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)(レビュー=id:SHARP:20080715)
★★☆☆☆火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)(レビュー=id:SHARP:20080703)

  • 国生さん(平均点=3.7)

★★★★★あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)(レビュー=id:SHARP:20080731)
★★★★★祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)(レビュー=id:SHARP:20080714)
★☆☆☆☆レ・コスミコミケ (ハヤカワepi文庫)(レビュー=id:SHARP:20080801)

  • 岩波さん(平均点=3.0)

★★★★☆砂漠の惑星 (ハヤカワ文庫 SF 273)(レビュー=id:SHARP:20080523)
★★★☆☆バベル17 (ハヤカワ文庫 SF 248)(レビュー=id:SHARP:20080805)
★★☆☆☆ドゥームズデイ・ブック〈上〉 (ハヤカワ文庫SF) ドゥームズデイ・ブック〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)(レビュー=id:SHARP:20080727)

  • 帆掛さん(平均点=2.7)(三巡目で脱落)

★★★☆☆きみの血を (ハヤカワ文庫NV)(レビュー=id:SHARP:20080717)
★★★☆☆ローズマリーの赤ちゃん (ハヤカワ文庫 NV 6)(レビュー=id:SHARP:20080708)
★★☆☆☆カーリーの歌 (ハヤカワ文庫NV―モダンホラー・セレクション)(レビュー=id:SHARP:20080803)

  • 富士見さん(平均点=1.0)(一巡目で脱落)

★☆☆☆☆たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)(レビュー=id:SHARP:20080707)