早川書房の「SF&ファンタジイ・フェア」(関連:2008-06-23 - coco's bloblog - Horror & SF)シリーズの3巡目に突入。
ホラー大好き帆掛さん推薦の『カーリーの歌』。世界幻想文学大賞受賞。
カーリーの歌 (ハヤカワ文庫NV―モダンホラー・セレクション)
- 作者: ダン・シモンズ,柿沼瑛子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1988/01
- メディア: 文庫
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死んだはずの大詩人ダースが実は生きていたという「特ダネ」を耳にして、アメリカの編集者のルーザックはダースの新作を入手すべく、妻子を連れてカルカッタへ飛ぶ。だが、汚穢と熱気と悪臭に満ちたカルカッタは悪夢の都市だった。ダースの行方を調査するルーザックに暗黒神カーリーを崇拝する教団の魔手が迫る。カルカッタはしだいにその黙示録的死と崩壊が支配する魔都の様相を呈し始め…
そんなストーリー。ちょっとカフカの小説の悪夢のような感じなのだが、いくらカルカッタがひどいところであろうと、欧米的な価値観で「不気味な存在」として断じるにも程がある。しかも、アメリカ人は(この主人公もだが、作家自身も)、純真無垢にアジア的な文化をバッシングするからやりきれない。とりあえずE・サイードの『オリエンタリズム』でも読め、といいたくなる。インドは中東でもイスラムでもないけれど、偏見の根は同じだ。
そして、主人公は散々な目に会い、途中には大きな犠牲もあるのだけれど、最後に復讐しないという選択をする。それがまた「先進国アメリカに住む文明人の高潔な決断」といったような感じで描かれるので、なんだかなあと思う。ちなみに、著者はこの後、ドイツのナチズムを題材にとった作品を書いている。こうなってくるともうインディ・ジョーンズばりの米国中心主義だ。
総じて、ホラー的な描写はいまひとつ、ストーリー展開も想像の範囲内、そしてカタルシスも乏しいということで、本当に「世界幻想文学大賞」を受賞するにふさわしいクオリティなのか、ちょっと疑問。「何か凄いことが起きるんだろうな」と最後まで読ませたことに免じて、★★☆☆☆。でも、想像を凌ぐ凄いことは最後まで起きなかった。
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