西武鉄道が上場廃止へ

12日付の日経新聞朝刊は「西武鉄道 上場廃止へ」を一面トップ記事とした。有価証券報告書の虚偽記載で上場廃止になるというのが異例なケースだという判断で一面トップになったのだろうが、上場廃止自体はおおかたの予想しているものであり、本来一面トップになるほどのニュース性はない。

市場は、重大なルール違反を犯した西武鉄道はマーケットから追放されるべきと見ているので、東証が投資家の信頼を取り戻すために上場廃止にするのは当然の対応である。そして、上場廃止までの間に投資家からの大量の売却が行われるので、西武鉄道の株価は大幅に下落するだろう。しかしながら、西武鉄道は経営破綻したわけではないので、株価がヒトケタになることはなかろう。あくまで個人的な予想だが、訴訟による損失と上場廃止による流動性の欠如をディスカウントしても、最終的には一株200円前後で落ち着くのではないかと思っている。

結局、上場廃止によって株式の流動性が乏しくなるところはあるが、西武鉄道の本質的な企業価値が減じられるものではない。有力な企業でも上場していないところはいくらでもある*1わけで、西武鉄道グループのような半ば同族的な企業にとっては、上場しないという選択が最適であるとさえ思える*2

そう考えると、今回の上場廃止というのは、西武鉄道側にとっても会社経営上ポジティブな意味のあるアクションになりうるのではないか。言い換えれば、西武鉄道は今回の上場廃止を契機に、より理想に近い経営に近づくことができる可能性がある。上場廃止は、さらなる飛躍のためにステップとさえ解釈できるかもしれない。そして、場合によっては、高まった企業価値をテコにして、再度上場を果たしたりすることも近い将来起こるかもしれない。そのとき日経新聞は「西武鉄道 再上場へ」という記事を一面トップに掲載するのだろうか。…するんだろうな、きっと。

*1:サントリー富士ゼロックス竹中工務店などが代表例。

*2:上場しないことの最大のメリットは、正体の分からない人に株式を買われないということ。