書籍

ジェーン・スー『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』

2003年、酒井順子は『負け犬の遠吠え』で「30代超・子供を持たない未婚女性」を「負け犬」と定義し、子供を持つ既婚女性と対比して、その生き様をポジティブに描いた。人によっては「ポジティブ」どころではなかったかもしれないが、僕にとっては旧来の価値…

一つの結果論だが―「世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち」

「それでも地球は回っている」とコペルニクスが呟いたという証拠はないが、周囲が全て天動説を唱えているときに、一人で地動説を唱えていても社会的に成功することは難しい。だが、周囲が全て「証券化によって債権を分散すればリスクは小さくなる」と唱えて…

京フェス2013のこと

京都SFフェスティバル2013に行ってきた。今年の本会はこんなタイムテーブルだった。 小説とコミュニケーション(円城塔、福永信) SFの中のセックス、セックスの中のSF ~私たちは何をエロいと思うのか(小川一水、掘骨砕三) 近未来都市SFのフロンティ…

そして毎日は続いてく―『3月のライオン(9)』

そして毎日は続いてく 丘を越え僕たちは歩く (「ぼくらが旅に出る理由」小沢健二) 表紙にもあるように、今回は「ひなた巻」。彼女を巡るいじめは一応解消したのだけれど、どのような進路を取るかという問題は、逃げることのできない別の話として、静かに横…

志村貴子『青い花(8)』―ついに完結

志村貴子は、このところ『放浪息子』と『青い花』を立て続けに終わらせた。何か事情があるのか、偶然の符合なのかは分からない。ファンの一人としては、『青い花』が性急な形で終わるようなことがないといいなと願っていたが、この巻を読んでその心配は杞憂…

渋谷直角『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』

サブカルの「サブ」は、サブプライムの「サブ」と同じで「下位」という意味。自分の好きなものが「サブ」と言われるのはどうなんだろう。「サブっていうな」と思うか、それとも「サブ上等」と思うか。はてなで「サブカル女とは」というページがあった。悪意…

桜木紫乃『ホテルローヤル』―地味な世界で地道に生きる人たちの物語

芥川賞作品と比べると直木賞作品は刺激が少ない。そんな風に考えていた時期が私にもありましたー148回受賞作の朝井リョウ『何物』を読んで、その衝撃的なラストに感銘を受けたので、今回の桜木紫乃『ホテルローヤル』も期待をもって読み始めた。釧路のラブホ…

藤野可織『爪と目』―二人称が成功しているとは思えない

あなたはこのエントリーを開く。予想通り長い文章が続いている。読む気がしないので、そっと閉じる―これが二人称文体だ。第149回芥川賞受賞作の藤野可織の『爪と目』は二人称で書かれた作品である。「あなた」とは誰のことなのか、そしてその人を「あなた」…

「ROLa」買ってみた

「nicola」の副編集長を務めた川上浩永が創刊した「ROLa」。ターゲットは「肉食文系女子28歳」だそうで、何人かそんな知人の顔が浮かばないでもない。が、この手の雑誌のターゲット層なんていうものは、広告を取るために無理矢理設定しているような面もある…

京都依存症

「京都」―この二文字にいかに自分が弱いかよく分かった。 雑誌コーナーをぶらついているときに、婦人画報2013年8月号がつい目に留まって買ってしまった。 しかも通常のサイズよりも小ぶりな「トラベル版」というところが決定打だった。 この雑誌を買うだけで…

ケトルvol.13に早見あかり

夏休みにどこに行こうかを考えていた。 書店で雑誌を物色していたら、ケトルvol.13を発見。 表紙は早見あかり。 特集は「島が大好き!」。 これは買うしかない。公式サイト:ケトルVOL.13 - 太田出版佐渡は今回載っていなかった。 でも、伊豆大島や、隠岐諸…

南沢奈央『普通。』

BSプレミアム『お父さんは二度死ぬ』で始まった南沢奈央強化月間(個人的な)。 南沢奈央『普通。』は、約4年前の写真集。ということは、大学生になる前に撮られたもの。フォトグラファーは、長野博文。『普通。』というタイトルそのままに、本当にどこまで…

『風の万里 黎明の空』小野不由美

小野不由美の十二国記シリーズの4作目『風の万里 黎明の空』を読んだ。 人は、自分の悲しみのために涙する。陽子は、慶国の王として玉座に就きながらも役割を果たせず、女王ゆえ信頼を得られぬ己に、苦悩していた。祥瓊は、芳国国王である父が簒奪者に殺さ…

歴史の闇が暴かれる―『新世界より(3)』

いよいよこの世界の光と影の「影」の部分が明らかにされる巻。及川徹の画力はますます高くなっている。冒頭のボノボ的な百合シーンは濃厚に、そして後半の血塗られた歴史はおどろおどろしく。これは続きが待ち遠しい作品。DVD付の限定版が3,800円。通常版は4…

この想いは純愛なのか―『姉の結婚(5)』

前巻では、真木との関係も解消し、川原との結婚話も白紙になったヨリ。さて、その次の展開は―いまや、ヨリも年下の女子から憧れられるくらいの、押しも押されぬ自立した女性である。一方、真木は、相変わらずヨリのことを忘れることができるはずもなく、その…

ちょっと君や僕に似てやしないか―朝井リョウ『何者』

Doesn't have a point of view Knows not where he's going to Isn't he a bit like you and me?自分の意見と言うものがなく 自分がどっちに向っているかも分からない ちょっと君や僕に似てやしないか ("Nowhere man"The Beatles) 朝井リョウ『何者』を読…

UはユウのU―『U』今日マチ子

マンガ・エロティクス・エフが「今日マチ子のエロス」を大特集したのが2010年11月だからもう1年半前になる。その号の表紙にもなった『U』が連載を終えて単行本化された。公式紹介は以下の通り。 ◆「あなたを殺したい」 ―――人間の力を超え、コピーロボットの…

渡辺ペコ『ボーダー(1)』

始まりがあれば終わりがある。終わりがあれば始まりがある-『にこたま』の最終巻と同時に発売されたのが、渡辺ペコの新作『ボーダー』の第1巻。主人公は男子大学生の清田。ガールフレンドの桜井との微妙な距離感とか、憧れを感じる「お姉さん」を追いかけ…

完結―『にこたま(5)』

渡辺ペコの『にこたま』の最終巻。あっちゃん、コーヘー、高野さん、それぞれに選択がある。三者三様。あっちゃんのポジティブな選択も、コーヘーの受け身な選択も、高野さんの強い選択も、それぞれに未来があると感じさせる。正しいかどうかは分からなくて…

『pen』に成海璃子

『pen』の4/15号は「世界で一番好きな場所」特集。公式サイト:http://www.pen-online.jp/feature/6517/表紙を飾るのは成海璃子。「パリと悩んだけどやっぱりこっち」ということで、渋谷を選んでいた。表紙の他に渋谷で撮った写真が4枚くらい掲載されている…

今回も正統派路線―川口春奈『haruna2』

この春高校を卒業した川口春奈の2冊目の写真集のタイトルは『haruna2』。傑作となったデビュー写真集『haruna』を撮った長野博文を再びフォトグラファーとして迎えた。版型も前作と同様で、装丁にも統一感があり、本棚で2冊並べるといい感じ。つまり、キー…

it could have been…川口春奈『haruna』

川口春奈は過去であり、二階堂ふみは未来である。僕らが二階堂ふみに期待するものは、自由奔放な発言であり、型破りな行動であり、斬新なファッションである。一方、僕らが川口春奈に期待するものは、優等生の言動であり、品格のある立ち居振る舞いであり、…

NTR小説として読む―『他人の顔』

NTRは「寝取られ」の略語である。Wikipediaによれば「自分の好きな異性が他の者と性的関係になる状況・そのような状況に性的興奮を覚える嗜好」ということだ。最近の流行でもある。『他人の顔』は、火傷で自分の顔を失った主人公が「他人の顔」をコピーした…

撮る/撮られる―『箱男』

フォトグラファーは、「撮る/撮られる」の関係において、つねに撮る側である。では、「見る/見られる」の関係においてはどうか。見落としがちなことであるが、フォトグラファーは見るだけでない。彼が何かを見ているとき、彼は誰かに見られているのだ。だ…

もっと続きを読みたかった―『Gまるえでぃしょん(2)』

河下水希先生がジャンプSQでノリノリで連載していた『Gまるえでぃしょん』(前巻のインプレは「ノリノリである―『Gまるえでぃしょん(1)』 - SHARPのアンシャープ日記」でエントリー)。第二巻にして最終巻を買った。G丸が物語を動かすところは相変わらず…

時をかける(かもしれない)少女―『マホロミ(2)』

建築っていいなと思わせる冬目景の『マホロミ』の最新刊。ほぼ1年振りの新刊、というのはまあ予定通りと言ってもいいんだろう。あらすじは以下。 真百合と出会い建物の記憶を視る能力に目覚めた土神。 大学で建築を学びながら建物たちの過去に触れるうちに…

『世界の終わり、あるいは始まり』

今年に入って三冊目の歌野晶午は、2002年の作品『世界の終わり、あるいは始まり』。公式の紹介文は以下の通り。 私の子供が誘拐犯なのか? 新境地を切り開く衝撃のサスペンス!東京近郊で連続する誘拐殺人事件。被害者たちの父親の名刺がすべて、なぜか私の…

クラウザーさんと根岸君はどっちが本性なのか―『君は淫らな僕の女王』

『月は無慈悲な夜の女王』みたいな話かと思って読んでみたら全然違う話だったでござる。むしろ、主人公のメガネ君の願いが人間の力を超えたところで叶うとか、部屋の中のドアを開けるととんでもないところにつながるとか。四次元的な設定。これは、ロバート…

自分の失ったものを知る―『霧島、部活やめるってよ』朝井リョウ

映画の方ではなくて原作小説の方の『霧島、部活やめるってよ』。青春群像劇。でもそう言い切るのはどうかと思われるくらい、ストーリーらしいストーリーがない。思いだけは爆発しそうなくらいあるのに。言葉だけは空回りしそうなくらいにあるのに。ただただ…

深みがない―『永遠の0 (ゼロ)』 百田 尚樹

『永遠の0 (ゼロ)』でデビューした百田尚樹はかつて放送作家だった。経歴で作家を判断する訳ではないが、構成がいかにもTV番組的であると感じさせる。かつて零戦のパイロットであり、戦死した宮部久蔵のことを孫たちが調べる。この孫たちがとっくに二十歳を…

不思議な味わい―『殺人鬼フジコの衝動』

『殺人鬼フジコの衝動』は不思議な小説である。ストーリーはフジコという女性が関わった殺人事件を時系列で描写していくに過ぎない。だが、まるで三面記事のような下世話な人間関係の描写と、主人公の一人称で語られる内面の醜悪さが、灰汁の強さを醸し出し…

内面を抉られるミステリ―『ウツボラ』中村明日美子

いつかは『ウツボラ』について書かなくてはいけないと思っていた。中村明日美子のサイコサスペンス。全2巻。だが、なかなか書けずにいたのは、この作品が読者の内面を抉る性質を持っているからだろう。ストーリーは以下の通り。 謎の死を遂げた美少女「藤乃…

向田邦子のよう―『式の前日』穂積

穂積のデビュー短編集『式の前日』を読む。表題作の「式の前日」は短いながらも強い余韻を残す話だが、その次に収録されている「あずさ2号で再会」もまた心温まる話。この作家の場合、あらすじ自体がネタバレになりかねず、それによって感動が減じられるこ…

和製デクスター?―『聯愁殺』西澤保彦

探偵達が、依頼人から持ち込まれた殺人事件について、ああでもない、こうでもないと独自の推理を開陳して論理を戦わせるストーリー。その推理のアクロバティックで荒唐無稽なところはまるでコリン・デクスターの「モース警部シリーズ」のようだ。モース警部…

『東の海神 西の滄海 十二国記』小野不由美

小野不由美の十二国記シリーズを順番に読んでいく。今回は『東の海神 西の滄海』。ストーリーは以下の通り。 国が欲しいか。ならば一国をやる。延王尚隆(えんおうしょうりゅう)と延麒六太(えんきろくた)が誓約を交わし、雁国(えんこく)に新王が即位して二十…

『風の海 迷宮の岸 十二国記』小野不由美

小野不由美の十二国記シリーズを順番に読んでいく。今回は『風の海 迷宮の岸』。ストーリーは以下の通り。 天啓にしたがい王を選び仕える神獣・麒麟。蓬莱国で人間として育った幼い麒麟・泰麒には王を選ぶ自信も本性を顕わす転変の術もなく、葛藤の日々を過…

厨二病にはたまらん世界―『魔性の子』

「十二国記」12年ぶりのオリジナル短編集が、本年7月1日発売決定ということで、『魔性の子』を読む。ある学校で起きる不可解な事件。特定の人物と関わりを持った人が連続して死んでいく。こうした超自然的な設定やホラーな雰囲気から、綾辻行人の『Another』…

デビュー作であることを思うと凄い―『慟哭』

貫井徳郎の『慟哭』を読んだ。ある程度ミステリに親しんでいれば、この作品の仕掛けにはかなり早い段階で気付くはず。類似のミステリやゲームも少なくない。だから、この作品は「トリック」を売り物にしない方がいいと思う。本書で描かれるのは、幼女誘拐事…

『現代写真論―コンテンポラリーアートとしての写真のゆくえ』

世界の現代アーティストによる写真作品243点を収録した現代写真論。順番に、コンセプチュアル、コンストラクティッド、デッドパン、静物、私写真、記録写真、ポストモダン、マテリアルの8つのテーマを一章ずつ用いて説明している。この分野でのテキストとし…

ややインパクト不足―『絶望ノート』

『葉桜の季節に君を想うということ』が面白かったので、歌野晶午の作品を続けて読む。今日は『絶望ノート』。舞台は中学校。主人公は中学二年生。いじめに端を発した事件。物語は、主人公の書く日記の一人称と、神の視点の三人称を交互にして進んでいく。歌…

目眩を感じるサプライズ―『葉桜の季節に君を想うということ』

たまにはミステリでも読もうと思い立ち、歌野晶午の『葉桜の季節に君を想うということ』を買った。ミステリの場合には、情報収集しすぎるとネタバレにつながることもあるので、事前知識を入れないままに読み始めた。結果、夢中になって一気に読んでしまった…

そろそろ舞城王太郎に芥川賞を

愛は祈りだ。僕は祈る―これは舞城王太郎の『好き好き大好き超愛してる』の冒頭。この作品は第131回芥川賞の候補になった。 今回の第147回芥川賞では『美味しいシャワーヘッド』が候補になっている。『美味しいシャワーヘッド』の冒頭はこうだ。 シャワーヘッ…

ロラン・バルト『明るい部屋―写真についての覚書』

ロラン・バルトである。写真論である。いずれも興味を惹くにもかかわらず、今まで読んでこなかったのは、物凄く影響されそうな予感がしたからだ。だが、実際に読んでみると、そういう予感が杞憂に過ぎないことが分かった。結論から言えば、これは写真論のよ…

文系/理系の二分法を越える良書―『文明崩壊―滅亡と存続の命運を分けるもの』

『銃・病原菌・鉄』で有名なジャレド・ダイアモンドの『文明崩壊―滅亡と存続の命運を分けるもの』が文庫本になったの読んでみた。文庫といっても、上下で合計1,100ページという大作なので、年末年始のひまつぶしには丁度良い。内容は、イースター島やマヤ文…

コトリノトリコ−川島小鳥『トリコ』

川島小鳥の写真集『トリコ』を買った。テーマは「東京=少女」。『B.L.T.』の連載に新作を追加しているもの。箕浦建太郎の絵も11点収録されている。このコラボは、今年の成海璃子カレンダー等でもおなじみのコンビ。フィルム的というかアナログ的な「温かさ…

希望という名の―『GUNSLINGER GIRL(15)』

“I think we’ll be ok here, Leon.” 「これで安心よ、レオン」 (『レオン』) 最終巻を読了。文句なしの傑作。相田裕の才能に感服。 当初、銃を持った少女がフラテッロとペアを組んで戦うという、ある意味で「オタク」にとってご都合主義的設定の作品が、こ…

決して美しいだけではなく―『3月のライオン(8)』

前半は、宗谷名人対桐山五段。二人の勝負自体が「高み」にいる同士のみが辿り着ける場所であって、もう美しいとしかいいようがない。『エヴァQ』では少年達はピアノの連弾で心を通わせ合ったが、ここでは将棋を差し合うことで同じ世界を共有している。勝負あ…

面白うてやがて哀しき―『姉の結婚(4)』

前巻末で「そろそろ物語は収束モード」と思わせたが、そんな一筋縄で行くような話ではない。そして、ヨリもそんな一筋縄で行くような女ではない。女40歳。その難しさがリアルに描かれている作品になっているのではないかと思う。さて、次の巻では「雨降って…

2012ウィンター京都計画(その3)

仕事が忙しすぎて全く計画が進まない。京都本ばかりが増えていく。今回買ったのはこの2冊。アートを楽しむ京都地図本 (えるまがMOOK)作者: 京阪神エルマガジン社出版社/メーカー: 京阪神Lマガジン発売日: 2011/03/17メディア: ムック クリック: 4回この商品…

今城純"milk tea"で温まる

"earl grey"と"milk tea"。今年5月に同時にリリースされた今城純の写真集。前者はイギリスの風景、後者はポートレート。寒い季節には。甘いミルクティーが恋しくなる。ということで、"milk grey"をチョイス。大きくて重い本ではあるが、眺めていて温かくな…