映画

『The Witch/魔女』(パク・フンジョン監督、2018年、韓国)

Netflixで『梨泰院クラス』を観て、イソを演じたキム・ダミにハマった。彼女のスクリーンデビュー作と言える『The Witch/魔女』を観た。(以下ネタバレあり) 施設を抜け出した特殊能力を持つ少女。記憶を失った状況で保護され、養父母の元で「普通の子」と…

追体験したかったのかもしれない〜『1917 命をかけた伝令』(サム・メンデス監督、2019年、英米)

サム・メンデスは僕の大好きな監督の一人。現代アメリカ社会の病理と、中年男性のミドルクライシスを同時に描いたデビュー作の『アメリカン・ビューティー』(1999年)でいきなりアカデミー賞監督賞を受賞し、イギリス王室からは大英帝国勲章を受章。10年代…

それぞれの格差社会の生き方〜『パラサイト』『ジョーカー』『万引き家族』

r>g (トーマス・ピケティ『21世紀の資本』) 「r>g」は、資本のリターンが経済成長率を上回ることを示す不等式で、トーマス・ピケティが『21世紀の資本』の中で示したものだ。いわゆる資本家はさらに富を増やす、ということは、時間が経てば経つほどに貧富…

モトーラ世理奈の存在感が印象的〜『風の電話』(監督・諏訪敦彦、2020年、日本)

『風の電話』を観てきた。 www.kazenodenwa.com東日本大震災で家族を失った少女が広島から岩手までを旅するロードムービー。遠く離れた親戚に引き取られていて、友人らしい友人もいなくて、周囲に心を閉ざして言葉少ない主人公が、故郷に向かう道の中で色々…

ミュージカルに遠く及ばない失敗作〜『キャッツ』(トム・フーパー監督、2019年、英米)

「映画」とは拡張のことである。「写真」に対しては時間の概念を加えることにより、「演劇」に対しては多面的な観点を導入することにより、より創造性の高い表現を行うことができる。だが、「映画」はそのような拡張性を持つがゆえに、観客への見せ方を誤る…

※ただしイケメンに限る〜『ラストレター』(岩井俊二監督、2020年)

小沢健二が2020年にリリースした新曲『彗星』は、1995年の冬の回顧するところから始まる。 1995年冬は長くって寒くて 心凍えそうだったよね 僕にとって、1995年の冬といえば、岩井俊二の初の長編監督作品『Love Letter』。同姓同名の「藤井樹」の間で奇妙な…

いんだよ、細けえこたあ〜『スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け』(EP9)

日米同時公開となった2019年12月20日、IMAXレーザーの新宿TOHOシネマを選んで鑑賞して来た。後期三部作の最初の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(J・J・エブラムス)は、往年のスターウォーズファンの求めるツボを押さえつつ、新たなヒロイン、新たなド…

『愛なき森で叫べ』(2019年、園子温監督、NETFLIXオリジナル)

1ヶ月くらい前、劇場に足を運んだときに、入場で豪華チラシが配られ、予告で力の入った動画を見せられる。それが『愛なき森で叫べ』だった。NETFLIX、プロモーションにお金かけてるよなと思ったが、内容が内容だけになかなか見る機会がなく今日になってしま…

おっさんはつらいよ〜『ジョーカー』(トッド・フィリップス監督、2019年、アメリカ)

女性差別、人種差別が「ポリコレ」で許されなくなった時代、ある意味最後に残ったのが「おっさん叩き」。キモカネおっさん(キモくて金のないおっさん)のことは、誰も助けてくれない。そんなおっさんが、「無敵の人」となって無差別大量殺人を犯す事件も増…

スーパースターの光と影〜『ロケットマン』(デクスター・フレッチャー監督、2019年、英・米合作)

そんな大それたものじゃないけれど、これが僕にできる精一杯 僕に与えられたこの歌を、君に贈るよ (エルトン・ジョン『Your Song(僕の歌は君の歌)』) Elton John - Your Song (Top Of The Pops 1971)好きな人への想いをエネルギーに作品を作りたい。そし…

アラビアの中心で「解放」を叫ぶー『アラジン』(2019年、アメリカ、ガイ・リッチー監督)

1992年のアニメ版『アラジン』のリメイク実写版を観てきた。キャラクターやプロットはおおむね原作を踏襲しているが、実写版の目玉として注目されているのはウィル・スミスによるジーニー。「主人の願いを叶えるランプの魔人」というステロタイプなキャラク…

『愛がなんだ』(2018年、日本、今泉力哉監督)

『愛がなんだ』(今泉力哉監督)を観に行ってきた。原作の角田光代がちょっと苦手なので先送りしてきたが、口コミで評判が広がっているのがあちこちから聞こえてきて、ようやく観に行ってきた。aigananda.com (以下ネタバレあり) と言っても、「ネタバレ」…

アベンジャーズの”総決算”〜『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年、アメリカ)

「マーベルコミックス」と「 DCコミックス」。言わずと知られたアメコミの2大出版社。スパイダーマン、アイアンマン、キャプテンアメリカなどを擁するマーベルと、スーパーマン、バットマン、ワンダーガールなどを擁するDC。紙媒体の時代からどこかシリアス…

『クワイエット・プレイス』(2018年、アメリカ)

「音を立てたら、即死!」 というコピーが印象的なホラー映画。最初に書いてしまうが、徹頭徹尾「低予算のB級ホラー」という趣。「目は見えないが、音に反応して人(動物)を襲うモンスター」から逃れる一家を描くという作品。監督・脚本がジョン・クラシン…

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018年、アメリカ)

映画『ミッション:インポッシブル』の公開は1996年。60年代からある人気テレビ番組『スパイ大作戦』の世界観のリメイクとも言えるものだったが、トム・クルーズ演じるオリジナルキャラクターのイーサン・ハントが人気を博して大ヒット、続編が作られるに至っ…

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』(2018年、アメリカ・イギリス合作)

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』を観た。 『ハリー・ポッター』シリーズのスピンオフに当たるもので、脚本はJ・K・ローリング、監督はデヴィット・イエーツ。前作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の続編ながら、テイス…

伝説の20分を追体験〜『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年、英・米)

伝説のバンドQueenの誕生からブレイク、そして危機から復活を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』が公開された。 僕は一般公開に先立って「前夜祭」で鑑賞して来た。映画『ボヘミアン・ラプソディ』公式サイト 大ヒット上映中! 会場の客層は、若者よりも…

”2”のジンクスを免れず〜『パシフィック・リム: アップライジング』(2018年、アメリカ)

ギレルモ・デル・トロ監督のオタク心、特に、日本のアニメや特撮が大好きな彼が、リスペクトする作品群へのオマージュをふんだんに取り込んだ『パシフィック・リム』が大好きだった。sharp.hatenablog.com あの戦いから10年。世代を変えつつも、怪獣が人類を…

密輸王に俺はなる!〜『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年、アメリカ)

エピソード7から始まる新三部作もゴールが見えて来た『スター・ウォーズ』シリーズ。スピンオフの『ローグ・ワン』のヒットを受けて、人気キャラのスピンオフものとして世に出されたのがこの『ハン・ソロ』。「帝国対反乱軍」あるは「フォース対暗黒面」み…

ハリウッドポリコレに配慮した良質娯楽作品〜「オーシャンズ8」(2018年、アメリカ)

2001の「オーシャンズ11」は、当時ノリにノッていたスティーブン・ソダーバーグ監督が、ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモンなどのイケメン俳優を集めに集めて作ったクライムムービー。クライムといっても、マフィア映画のように血で…

『カメラを止めるな!』(上田慎一郎監督)

話題の『カメラを止めるな!』(上田慎一郎監督)を見に行ってきた。今日からTOHOシネマズ系で上映が始まり、仕事帰りに金曜日夜の六本木ヒルズへ。 この作品の場合、ネタバレをせずに感想を記すのはすごく難しい。「余分な情報を入れずに観る」ほど楽しめるこ…

『トゥームレイダー ファースト・ミッション』(2018年、アメリカ、ユーアル・ユートハウグ)

1964年の東京オリンピックは、敗戦国日本の復興の姿を世界にアピールするものだった。そこには、最新のテクノロジーと東洋の神秘性のミクスチュアがあり、サイード的な偏見の眼差しこそあれ、日本が世界を引きつけたことは間違いなく、かの『007』シリーズで…

映画にとってリアリティとは何か〜『15時17分、パリ行き』(2018年、アメリカ、クリント・イーストウッド監督)

88歳となってもなお創作欲とアイデアの衰えないクリント・イーストウッド。この作品では、ヨーロッパの列車内で起きた実在のテロ事件を映画化。アラブ系のテロリストが大量殺戮を図ったのに対して、たまたま乗り合わせたアメリカ人3人が一致団結して対処し…

『レッド・スパロー』(2018年、アメリカ、フランシス・ローレンス監督)

1991年のソ連の瓦解とともにリアリティを失うかに見えた“スパイ映画”というジャンル。ところがどっこい。2010年代になっても『007』『ミッション・インポッシブル』『ジェイソン・ボーン』などのエージェント映画は大ブーム。ジェームズ・ボンド役は時代によ…

『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年、アメリカ)

『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』を観に行った。 マーベル vs DCの文脈で言えば、マーベルによる「アベンジャーズ」がDCの「ジャスティスリーグ」を凌いでいることで、それぞれの単発映画の興行成績にも「越えられない差」をつけているように思う…

『グレイテスト・ショーマン』(2017年、アメリカ)

『グレイテスト・ショーマン』を観に六本木ヒルズのTOHOシネマズへ。ここのSCREEN7は、スクリーンは通常比20%増しのTCX、音響はパワフルなDOLBY ATOMOS。ミュージカル映画を見るには最適とも言える環境。ストーリーは、19世紀に実在した米国の興行師P・T・…

『ブラックパンサー』(2018年、アメリカ)

ブラック・イズ・ビューティフル。世界的ヒット作になった『ブラックパンサー』(2018年、アメリカ)を観た。マーベルコミックのヒーローの一人で、アベンジャーズの次回作にも登場するブラックパンサーの単独作品。主演のチャドウィック・ボーズマンも黒人…

水の中こそまことー「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017年、アメリカ)

「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」 (江戸川乱歩) ヲタクはロマンチストである。ソースは俺。 …ということで、「パシフィック・リム」を世に出したヲタク監督のギレルモ・デル・トロ。 sharp.hatenablog.comヲタクならギレルモ嫌いな人はいないよな。…

「キングスマン ゴールデン・サークル」(2017年、イギリス)

「キックアス」のマシュー・ボーン監督がメガホンを取ったスパイ映画「キングスマン」の続編。「007」や「ジェイソンボーン」などのシリアス系のシリーズとは違って、エンタメ優先、テンポ優先、アクションのキレ優先という感じ。随所に「いんだよ、細けえこ…

映画「オリエント急行殺人事件」(2017年、アメリカ)

「フーダニット」(誰が殺したのか)の古典中の古典とも言える作品の映画化。名探偵エスキュール・ポアロ作品であること、クリスティらしい「フェアだが意外な真相」という特徴ゆえに、この作品を知らない人は多くないだろうし、これまでの映画化・映像化さ…