ハリウッドポリコレに配慮した良質娯楽作品〜「オーシャンズ8」(2018年、アメリカ)

2001の「オーシャンズ11」は、当時ノリにノッていたスティーブン・ソダーバーグ監督が、ジョージ・クルーニーブラッド・ピットマット・デイモンなどのイケメン俳優を集めに集めて作ったクライムムービー。

クライムといっても、マフィア映画のように血で血を洗うようなものではなく、あくまで詐欺師モノで、頭脳プレイとチームワークでカジノから大金を盗み取るというもの。

カジノの経営者のキャスティングに「ゴッドファーザーIII」の血で手を染めるような演技が印象的だったアンディ・ガルシアを起用しているところまでもう完璧で、ほぼ唯一と言っていい出演女優のジュリア・ロバーツがもう添え物的で、「夢のイケメンチーム大戦争」という、ある意味でマチズモを具体化したような映画だった。当時のソダーバーグにしかできなかったものかもしれない。

これは人気シリーズとなりその後「オーシャンズ12」「オーシャンズ13」と続編が作られたが、ご多聞に漏れず、マチズモならぬマンネリズムから免れずことはできず人気も下火になっていた。

そこから10年経って、今年この「オーシャンズ8」である。

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数字は最初の11から少なくなっているが、よくありがちな「前日譚」「エピソードゼロ」ものではない。

盗むものも、カジノのお金ではなく、なんとカルティエのジュエリー。お値段数100億円。

(よくカルティエが撮影協力したよなあと個人的に思う)

オーシャンズ13」の世界線の延長上にあるという設定だが、キャスティングは一新されている。


この賭けがどう出たかといえば、結果的には大成功。


主人公のデビー・オーシャン を演じるのは、54歳のサンドラ・ブロック

オーシャンズ11」を演じたジョージ・クルーニーが当時40手前だったことを思えば、だいぶ年齢を重ねているが、これは当時のファンだった女性が自己投影しやすいようにという意図だろう。

そして、デビーの友人にして相棒ルー・ミラーを演じるのは、ケイト・ブランシェット

仕事のパートナーであるばかりか、双方の恋愛経験もよく知っている「仲間」であり、このあたりの設定もアメリカ映画の王道という感じ(個人的には、ファッショナブルなケイト・ブランシェットの役作りはどこかおかしく感じてしまう)。

仲間に加わるのは、みんな女性。

そう。

ハリウッド的には、男尊女卑を否定するのが今のポリコレなので、男性に屈するのではなく、男性と対等に、あるいは男性を見返すというのが、作品の設定として求められている。

昔の仲間のアミータにミンディ・カリング、インド系のタミーにサラ・ポールソン、東アジア系のスリにコンスタンス にオークワフィナ、そして黒人系のハッカーであるナインボールにリアーナ。

白人女性だけでポリコレ的に正しくない。

2010年代のドリームチームには、黒人、インド系、東アジア系がしっかりと入っている。

これが今のハリウッドポリコレ。

峠を越えたデザイナーのローズ・ワイル役のヘレナ・ボナム=カーターは、ちょっと時代からずれてしまった「おばさん」役を好演していて、こういう息がつまるようなクライムムービーの一服の清涼剤になっている。


そして、忘れてはいけれないアン・ハサウェイ


この人のことをあまり書くとネタバレとなってしまうが、間違いなく、「オーシャンズ11」世代のファンではなく新しい「オーシャンズ8」の新規のファンを取り込みにきている。


美人で利発という役柄が多いアンだが、この役ではコメディ方向にも新境地を開拓していて見所が多い。


じゃあ、イケメンは出ないのかっていう話なんだけど、そこはしっかりとリチャード・アーミティッジが出演している。

ただし、敵役というよりは、あくまで花を添えるというか、カモにされるというか。

彼に大活躍を期待すると物足りなさが残るんだけれども、こういうあたりが、今のハリウッドのフェミニズムの空気なんだろうと思う。

舞台が、NYのメトロポリタン美術館っていうのも、個人的はよく知ってる場所で馴染みがあるので、リアリティを持って見ることができた。多くの米国人にとっても、有名観光地なので、ラスベガスのカジノよりもさらに親しみがもてる設定かもしれない。

それに何よりもNYはオシャレだからな・・・

エンディングもいかにも続編を作る気満々のエンディングだったので、まあそっちも楽しみ。

できれば、もうちょっと存在感のある敵のオトコを用意して欲しいかな。

まだ見ていない人には是非お勧めしたい。

ハコイリ♡ムスメ 1stアルバム発売記念~Queen of "Hardcore”Championship~ vol.1

おととい阿部かれんが卒業したハコイリ♡ムスメ。

阿部が抜けた穴は決して小さくはないが、この時期はさらに受験・進学を控えたメンバーが休業するのが常。

今年は7人のうちJK3一人(我妻桃実)、JC3二人(吉田万葉、寺島和花)が対象学年になるが、中三組の吉田万葉と寺島和花がこの10月より活動を縮小。

岩手在住の戸羽望実の平日稼働が難しいこともあり、実質的には我妻・星・井上・塩野の4人のメンバーがコアとなって平日の活動を行うことになる。

そんな中、今日から始まった平日定期「Queen of "Hardcore”Championship」。

さすがに「4人のハコムス」は厳しいとあってか、平日定期は回によって、吉田・寺島・戸羽も日替わりで参加し、毎回5人の公演になると発表された。

初回の今日は祝日ということで戸羽望実を含む5人での公演になった。


12月25日に初のオリジナルアルバムを出すとあって、ハコムスのオリジナル曲を毎回取り上げて、ハードコアかわいいメンバーを投票で決めるという企画。

今日のテーマは「レモネード・キッス」。

それぞれのメンバーが楽曲にふさわしいと考えて来たコーディネートで登場。

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まずはこの衣装が採点ポイント。

「いじわるねDarlin‘」、「Winterスプリング、Summer」を披露した後、自己紹介に続いて、「レモネード・キッス」の歌詞をメンバーが解説。

まるで国語の授業みたいで楽しい。

「レモネード・キッス」の後は、ハコムスの得意な「お芝居対決」。

楽曲のシチュエーションにあったセリフを一人芝居で披露するというもの。

僕は劇団ハコムスも大好きなので、こういう一人芝居を見るのは本当に楽しい。

そして、ハコムスのメンバーのお芝居も真剣で、じっくり鑑賞しがいがある。


「好きです、付き合ってください」とまっすぐな瞳で訴えた戸羽望実

隣に相手がいるという想定で親しみやすさを演出した塩野虹

歌詞を要領よく引用して「抱きしめて?」と大胆に迫った井上姫月。

練りに練った世界観を作り上げ、二重にも取れる意味深な台詞を繰り出して「私の気持ちを当てるゲーム」に誘う星里奈。

演技とは思えない自然な空気を醸しながら、相手の懐に入り込んでいく我妻桃実


あくまでフィクションなんだけれども、見ているとどれもメンバーの個性そのものがにじみ出ているように思えた。

このセリフも採点ポイント。


5人のハコムスで「アンブレラ・エンジェル」を披露。フロントは、我妻桃実をセンターに、塩野虹と井上姫月が両枠を囲むフォーメーション。井上はこの曲で初のフロント。

次の「避暑地の森の天使たち」は、我妻・星・塩野の3人でのユニット。

5人で「泣かないでエンジェル」を歌ったところで、観客が総合評価で「Queen of "Hardcore”Championship」を選び、投票する。

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集計する間に、我妻・井上コンビの「星座占いで瞳を閉じて」、戸羽をセンターにした「はんぶん不思議」(サビの「あなたいじわる」のパートも、阿部による後継者指名で戸羽に引き継がれた)。

そして、いよいよ結果発表。

今日のクイーンは、「優勝:星里奈(31p)」。

衣装もかわいかったけれども、台詞というか演技が評価されたのかなという感じ。

この先12月25日まで続けられるハコイリ♡ムスメの平日定期。

出演メンバー数が少ないというハンデを打ち返そうとする意欲のある公演だし、メンバーの個性のさらによく知ることができる企画だと思う。


(セットリスト)

1 いじわるねDarlin‘
2 Winterスプリング、Summerフォール
自己紹介
レモネード・キッス解説
3 レモネード・キッス
お芝居対決
4 アンブレラ・エンジェル
5 避暑地の森の天使たち(我妻・星・塩野)
6 泣かないでエンジェル
MC
7 星座占いで瞳を閉じて(我妻・井上)
8 はんぶん不思議
(*我妻・星・井上・塩野・戸羽)

パンダらの箱 Vol.11@渋谷REX

”楽曲派()”とは、「センスのいいナイスな音楽を求めて、貪欲にアンテナを張っている好奇心旺盛な人たち」のことである。

決して中学生好きのことではない。



さて、FAREWELL, MY L.u.v、グーグールル、クマリデパート、Fullfull Pocket、パンダみっくの5組が出演するパンダらの箱。

そう、これ、IDOL Pop'n Partyではなく、あくまでパンダみっく主体の5マン。

今日の渋谷REXは、そんな5組の音楽を楽しもうとする楽曲派()でパンパン。

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FAREWELL, MY L.u.v

名古屋の中学生3人組。

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音楽的には、R&B〜ソウルをベースにした横揺れ系。

これ見よがしなアップテンポのディスコサウンドではなく、ゆったりとしたバイブスに身を委ねるというノリ。

キレッキレなダンスとかパワフルなボーカルを武器にするというよりは、中学生ならではの「フレッシュさ」「等身大な感じ」が刺さるというか。

最後の曲に行く前に見せた茶番MCも楽しかった。

東京ではなかなか見られないので、フェアラブ見たさで今日ここに足を運んだ楽曲派()も多そう(僕もそう)。

グーグールル

ベルハー、MIGMA SHELTERなどの出身者を擁するグーグールル 。

MCもなく、トランス系の楽曲をノンストップで畳み掛け、フロアを熱狂させて行く実力派。

髪を振り乱し、衣装をはだけながら踊る様子に、興奮した女性ファンがたまらず最前センターまで突っ込んで来てエモかった。

クマリデパート

今日の出演者の中では、「パンダらの箱」などでのパンダみっくとの共演が一番多そうなクマリデパート。

羽井リサコ卒業、新メンバー加入(1名脱退)と、動きの大きい年だったが、現在の4人体制には安定感がある。

楽曲の世界観は新旧作品ともサクライケンタ節という感じだったが、ブクガのような「時代の先端を切り拓く」感はあまりなく、10年代の沸き系アイドルグループソングの王道感全開なのが面白い。

まあ、みんながみんなラウド系、グランジ系になってもある意味退屈なので、これは大いにアリ。

(セットリスト)

1 あれ?ロマンティック
2 二十四時間四六時中
3 愛phone渋谷
4 あいろにー!
5 アンサー!

Fullfull Pocket

トリ前はフルポケ。

フルポケとパンダみっくはジ・ズー主催イベントでの共演歴はあったけれども、現在の新生フルポケは、パンダみっくと親和性が高いと思っていたので、待ち望んだ共演。

ステージに登場した時からメンバーの表情がキメキメのハードモード。

いきなりフルスロットルで「キミトシル」。髪振り乱してオイオイ叫んでしまう。

「きみが大好き」からの「ロミジュリ」の流れも最高。

この「ロミジュリ」のスネアドラムのチューンが、パンダみっくサウンドと似ているんだよね。

アウトロで、終わると見せかけたフェイクブレイクからのワンターンも最高。

前半がビターな味わいの展開だったが、後半で、フルポケらしい甘さを交えた世界観の「flower flower」「Pop Classic」を入れて来たセトリもよかった。

リーダーの石井栞は終始フロアからの反応に手応えを感じるような表情をしているし、広瀬みのりは特にソロパートで安定したパフォーマンスを見せてくれるし、桜木ゆふはライブが楽しくて仕方ないというのが伝わってくる。

そしてフルポケと言えば中学生メンバー。

宇敷陽南の「守ってあげたくなる」オーラを出している存在感はこのグループのフックになっているし、MCでの天真爛漫さも魅力的。

角田珠沙は、パンダみっくのメンバーと同じ中学二年生ということで、パンダの耳のようにお団子二つに結んだヘアスタイルで出演。

「かわいい!」と叫ばずにはいられなかった。

ほんと、今のフルポケのライブは楽しすぎる。

(セットリスト)

1 キミトシル
2 きみが大好き
3 ロミジュリ
4 flower flower
5 Pop Classic

パンダみっく

トリは主催のパンダみっく。

最初の曲がオリジナルの「ヒズムリアリズム」で、音源もダンスも2016年当時のもので、いきなり高まった。

「今夜がおわらない」「まみむめも」と、フロアの観客が一緒に楽しめる系の曲から、クールな「東京109」「好きな曜日はxx」「止まらないBGM」、そして、最後はみんな大好き「ネズミーランド」。

パンダみっくは、今や楽曲派()の「共通言語」になっていて、どの曲も盛り上がれた。

結成当時は、「全員小学生」だったグループが2年の年月を経て「全員中学二年生」になったが、グループの実力も大いに成長していると思わさせた。

(セットリスト)

1 ヒズムリアリズム(オリジナル)
2 今夜がおわらない
3 まみむめも
4 東京109
5 好きな曜日はxx
6 止まらないBGM
7 ネズミーランド


ということで、今日の「パンダらの箱」は、楽曲派()大集合だった。

派手なメンツという感じではなかったが、5組の出演者が楽曲的に粒ぞろいだったこともあってか、センスと感度の良いヲタク達で渋谷REXはパンパンになっていた。

できれば物販・特典会も行きたかったが、終演後のフロアがカオスになっていたので今回は見送り。

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次回のパンダらの箱に関する企画は特に告知などはなかったが、こういうイベントをまた主催してほしいなと思う。